2010年11月30日火曜日

Unknown

今年はみなさんがそうしているように、100首並べてみます。
前半のとか、もう去年のじゃないかという気分で眺めました。

100番目のお題「福」が、1首目に詠み込まれていて、
なんだかふしぎな気持ちになりました。







祝福をされたくて買う春キャベツ 今日はどんな話をしようか

暇だねと言い訳をして寝るふたり しあわせとは無意識であること

土曜日はよそ見をしよう公園にバドミントンを持って出かける

いつだって疑わない君とこのまま忘れていきたい感情もある

湖のボートに乗り移るみたいに抱きしめられて波が生まれる

見逃したサインも互いにあるだろうけれどめげずに寄り添っていく

2ヶ月に一度くらいはしおらしい女になろうと決意している

南北へのびる国道を横切る 明日には帰るきみの手のひら

あなたとの子供をいつか産むのだと気付かされ摂る多めの野菜

持ち寄って手をつなぎました 他の誰かの幸せを祈ったかけら

誰のためでもない空は青くってふたりは今日もふたり語を話す

穏やかなあなたが真面目になるときの「君(きみ)」を好きになれない私

元気ないときは君の部品になって一緒に悲しむからだきしめて

お互いの顔を見えないようにして接着しよう 今夜だけ

君にしか見せないブラウス着て眠る 着いたら起こしてね「マイガール」

それならば今連れてって 図書館を抜け出す初二人乗り記念日

しなくても済む言い合いを最近はちゃんと未然に防げてる(つもり)

東京に来てよかったあのアパートに最後に上げたのが君でよかった

押し殺さなくなっていたあの人の代わりに君に許されてから

まぐれだということを忘れるくらいどこにでもいる2人になろう

女狐と知ってもきっとまた胸に赤い痕をください、ひとつ

カレンダーに記す小さなめじるしの周期について話す昼寝前

やわらかい手のひら ほかの誰かには触らせたくないきみの魂

よこしまな気持ちも全部打ち明けよう ひとり相撲はもう終えたんだ

環状線沿いを並んで歩きつつ結婚したあとのことを思った

雨粒を丸くはじいて私たち今日はどこまで出かけてみようか

うしろからそわそわしてる心臓をなでる もうすぐ動きだすのね

眠ってるあなたに日陰をつくりつつ静かに生理を待っていた夏

存分に利用しあおう 泣くほどに誰かを追わなくたってもういい

天秤がかたんと鳴ってうなずいた 上乗せされる砂糖に負けて

昔見たSFのような花の降る中庭にいます きっと見つけて

半分にできない苦しみはそのまま一緒に美味しいご飯を食べる

親指をずぶりと皮に挿してまた同じだけみかん色になる肌

孫が居るころには今の毎日も可愛いものだったって言えるかな

どなたかが君を待ってる金曜は残業してもからっぽのまま

誰だって正義のヒーローだっていい「まだ間に合う」って説得してよ

奥底に届かなかった私よりもっと大事な人のねむる場所

泣くほどに聞こえなくなる空耳をなにもできずにただ見送るだけ

引き止めることを怠ろうとしてる 本当にもう行ってしまうのに

焦点の長すぎるレンズ 遠ざかるあなたにピントが合ってさよなら

書きかけのメールは捨てた 8階のビルから見る鉛色の東京

認められない学者みたいに中庭で誰も必要としない話を

銀箔の剥がれた向こう なつかしい空気を今は見ないふりする

ペットにも妻にもなれないけど今は名前を呼んで耳まで刺して

群集のひとりになりきれないだろう あなたの許しかけた目が見たい

解決にならないじゃんけん繰り返す 私たちは寂しいだけだから

もう泣けない思い出を蒸し返すならオレンジジュースぶちまけてやる

来世さえ約束できない結局はその程度の好きだった 寂しい

絶対にぜったいにもう叶わない願いを袋に入れて殴った

いい加減わかってよそんな虹なんて見たくないよ欲しいあなたが

私たちの番号は離れてしまった 強い風に髪をまかせる

この人のそばでお婆ちゃんになる いろんなものを見守る代わりに

ふたりとも生きているのに離れなきゃいけないことにぽかんとしてる

限りある戯れは終わってしまった ここからはもうその後でしかない

アメリカに居てもきみはきみだから私はただ会えなくてさびしい

あなたには水やりの義務はないのだし枯れてゆくのを見られたくない

秋晴れは新婚のきみを連れていく 私は台所で小豆を煮る

脳みそは今きっとすごくやわらかい こたつで思い出しているから

好きだって言えない病気をお互いに抱えたままで屋上ふたり

緑茶ハイ 流行っていた漫画の話 梅ハイボールまた緑茶ハイ

奴呼ばわりされたい きみに何もかもさらけ出すなんて出来ないくせに

今してるネクタイが欲しい完璧じゃない君のまま家に帰って

君だって仏さまではないでしょう 少しくらいは声を荒げて

恋人の次はふたごかもしれない その少しあと夫婦になろう

くらやみにまどろみきれず触れているあなたの手首の骨がいとしい

もしもまた会うときに疲れ果ててたらあなたの部屋で雛になりたい

匿名のまま抱き合って翌日に雨が降ったらさよならしよう

ドライフルーツの硬さたしかめつつ君が怒ったところを想像してた

雨が降り出す直前の離島から東京のこと眺めてみたい

何回か分の薬と涙とが染みた白衣で来る喫煙所

褪せてゆく思い出を止めようとして書いては消して歌っては黙る

紙コップくしゃくしゃにした ど田舎にいたって挫折するもんはする

反対に取り付けられた弁のよう引き止められず撫でられるだけ

あとがきに答えは載ってないのだと気づいている図書室 夏終わる

微笑みはいつだってすぐ取り出せずほら今じゃなきゃだめだったのに

スーパーできみの嫌いなパプリカをさわってたしかめて買わなかった

うらやんでうらんだあの娘の反対にしか進めないおんなじなのに

見えはしない指紋に親指を重ねてもらったペンで数式を解く

第5回くらいの一緒の飲み会で「梅酒だっけ?」と聞かれてうなずく

今夜はもう何も言わないで帰ろうきっとまたすぐ会えるのだから

あのシェフは助けることに決めてるのホテルが突然つぶれたとしても

弾丸は鈍く光を反射して 「あなたの胸で死にたかったわ」

雲のない空と冷気がよりそってあなたの孤独を教えてほしい

結局は千切ることなんて出来ずにそのへんに転がしておいた恋

抜けきっていない訛りはやさしくて 初恋の子の名前を聞かせて

わかってて踏んでしまった水たまり後悔はすっとしていてつめたい

綺麗だと言いたくなくて黙ってる あなたは今日もまっすぐなのに

防御にもならずに赤いマニキュアはただただ私を安っぽくする

君がもうなにか言おうとしてる 目の前のソーダの泡になりたい

降りつもりとける恐怖を毎日のように見ている 空の灰色

まだ君はゆっくり浸かっているだろう旅館の畳の緑はうすい

鮮烈なイチョウのきいろが追いうちをかける 誰かに見つけられたい

あなたとかあの子のことはもういいわシロツメクサの全部を知りたい

底までは見えないように表情を変えるあなたはここまで来ない

黒糖はやさしく甘い 泣きながらきみへのてがみを書き上げました

約束をしなければ会えなくなったあなたが交差点を右折する

使われず財布の中で眠ってた引換券の期限は去年

眠ってるあなたの腕にからまって基礎体温計咥える6時

この胸の痛みなんかじゃイコールの先にあなたは連れてこれない

またいつか集まったときそれぞれが幸福でいよう乾杯しよう

6 件のコメント:

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    こんにちは。
    完走おめでとう。
    100首読んだよ^^完走報告にもあるように、今年は読んでいてもときどき苦しくなるような歌がいくつかありました。
    ゆいちゃんの歌の言葉は、頭ではなくて心から出てくるように感じます。
    では今年も10首選を。

    029:利用
    存分に利用しあおう 泣くほどに誰かを追わなくたってもういい

    041:鉛
    書きかけのメールは捨てた 8階のビルから見る鉛色の東京

    044:ペット
    ペットにも妻にもなれないけど今は名前を呼んで耳まで刺して

    049:袋
    絶対にぜったいにもう叶わない願いを袋に入れて殴った

    056:枯
    あなたには水やりの義務はないのだし枯れてゆくのを見られたくない

    058:脳
    脳みそは今きっとすごくやわらかい こたつで思い出しているから
    (上の句、女性ならではと思います。感覚としてよくわかります。)

    065:骨
    くらやみにまどろみきれず触れているあなたの手首の骨がいとしい

    068:怒
    ドライフルーツの硬さたしかめつつ君が怒ったところを想像してた

    076:スーパー
    スーパーできみの嫌いなパプリカをさわってたしかめて買わなかった
    (きみの嫌いなものをわざわざさわって確認するということに、きみの全部を知りたいという気持ちがあらわれていて、パプリカというもの色鮮やかで、一番惹かれた歌です。)

    085:訛
    抜けきっていない訛りはやさしくて 初恋の子の名前を聞かせて


    他にも「土曜日はよそ見をしよう」という捉えかた、カレンダーの歌、褪の下の句など惹かれました。
    おつかれさまでした。

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    ゆいちゃんこんばんは。
    今年も完走おつかれさまでした!去年は好きな歌がたくさんあったにも関わらず、まだ遠慮しがちな仲でwひとつの題にしかコメントできなかったので、今年はあたしも選歌なんかさせてもらっちゃいます。


    持ち寄って手をつなぎました 他の誰かの幸せを祈ったかけら
    (胸がつまりました。うん、こういう恋もあるよね。)

    押し殺さなくなっていたあの人の代わりに君に許されてから
    (幸せなのかふしあわせなのか一読ではわからないもやもや感がかえって素敵でした)

    よこしまな気持ちも全部打ち明けよう ひとり相撲はもう終えたんだ
    (これすごいと思う)

    認められない学者みたいに中庭で誰も必要としない話を
    (これもすごいと思う。この歌に限らず、小さな心の揺れや、だれもが経験するんだけど言葉にはしないようなことをとらえてうまく感情をこめながら短歌にするのがうまいなあと思います。)

    いい加減わかってよそんな虹なんて見たくないよ欲しいあなたが

    今してるネクタイが欲しい完璧じゃない君のまま家に帰って
    (上ふたつ、かっこよくていいやつなんだけどわからずやの男を好きになってしまった、女の子の不消化な心を想像して苦しくなってしまいました笑)

    くらやみにまどろみきれず触れているあなたの手首の骨がいとしい
    (とても好きな歌です。「まどろみきれず」という言葉もいいし、ひとりだけ眠れない夜の、でも孤独とは違う温度が伝わってくる)

    紙コップくしゃくしゃにした ど田舎にいたって挫折するもんはする
    (そうだそうだ!するもんはします!w)

    まだ君はゆっくり浸かっているだろう旅館の畳の緑はうすい
    (絶対10首の中にいれようと思ってた。)

    約束をしなければ会えなくなったあなたが交差点を右折する
    (またね。元気でね。ってすごい言いたくなる)


    10首までと決めているので削りましたが「仏」の歌や微笑みが取り出せない歌、奴呼ばわりされたい歌にやっぱり地方出身者としては「東京にきてよかった」の歌なども選歌にいれるか最後まで悩みました。
    100首目の思いを完走報告で読んで、ぐっときたよ。やっぱり気持ちのこもった歌はすてきです。
    来年も一緒にがんばれるといいな♪

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    イマイさん

    ことしも10首選、ありがとうございます☆
    パプリカの歌は実話です。
    嫌いなものはありますか、と聞いてパプリカと言われたときから、パプリカが気になってしまいました。
    好きなものとおんなじくらい嫌いなものも意識してしまいます。

    脳みその歌が選ばれたのはちょっと意外でしたが、女性ならではと言ってもらって納得しました。
    「女なんて感情で生きてるんだから!」って職場の女の先輩が言っていたことを思い出しました。(ほんとにそう思う。)


    イマイさんの選んでくれた10首が、自分でちょっと気に入ってる歌ばかりだったので驚きました。そして嬉しかったです。

    来年もまた走りましょう

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    こゆりん

    10首選、ありがとう☆
    そうだね、でも去年コメントもらったとき、すごく嬉しかったのを覚えてるよ。

    こゆりんの選んでくれた10首はちょっと意外で、面白いなあと思いました。
    「認められない学者」だとか、「旅館の畳」の歌は自分でも地味に気に入ってるので(笑)、選んでくれて嬉しかったよ。

    押し殺さなくなっていた、の歌は、中身としてはしあわせなのかもしれないけれど、確かに表現があいまいだったかも。
    心を許してくれない相手には、自分もやっぱりどこか出し切れない部分があって(正でも負でも)、それを今ではあまり気にせず出してしまっているなあ、って思って詠んだ歌です。

    やっぱり自分でも、実感が強くこもっていたほうが気に入る歌が出来るんだなと思いました。

    今年はうんと遅くなってしまったけど、来年も一緒に走ろう

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    今更ながらだけど選ばせて♪

    1.祝福をされたくて買う春キャベツ 今日はどんな話をしようか
    (こういう日常の小さな幸せを詠むってすてきだよね。下の句がすき。)

    2.あなたとの子供をいつか産むのだと気付かされ摂る多めの野菜
    3.カレンダーに記す小さなめじるしの周期について話す昼寝前
    4.眠ってるあなたに日陰をつくりつつ静かに生理を待っていた夏
    (この三首、唯ちゃんらしくてすき!ふんわりした日常の中で、
    ちょっと怖いくらいな印象を持って「女であること」を自覚する時を歌っている。女であることは宿命。みたいな。これぞ唯ちゃんらしさだわ。)

    5.緑茶ハイ 流行っていた漫画の話 梅ハイボールまた緑茶ハイ
    9.第5回くらいの一緒の飲み会で「梅酒だっけ?」と聞かれてうなずく
    (この二首、お酒が良い味出しててかわいいな。細かいけど、一首目の「流行っていた」と過去形なので、終わった恋の話とすると、また奥深くなります。)

    6.今してるネクタイが欲しい完璧じゃない君のまま家に帰って
    (分かるなー、なんか完璧じゃなくさせたい気持ち。一方でいつも完璧でいて欲しくもあるけど。矛盾w)

    7.くらやみにまどろみきれず触れているあなたの手首の骨がいとしい
    (一番好きな歌!平仮名多いのも良い効果を与えてるし、単純にシンパシーを感じる感覚。なんかさっきの三首にも通じるものもあって、静かな怖さもあってすてき。)

    8.見えはしない指紋に親指を重ねてもらったペンで数式を解く
    (これも唯ちゃんらしくていい。見えない指紋を見つけだす視線が細やかでいい。)

    10.防御にもならずに赤いマニキュアはただただ私を安っぽくする
    (わかる。こうした逡巡が女子!ってかんじ。)

    すてきな短歌をありがとう。
    今年も大変お世話になりました★BSに一緒に出れたのが良い思い出!来年もよろしくね。早々に女子会しましょ~♪

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    えいみー、10首選ありがとう!
    大好きなひとたちに選んでもらってしあわせです。

    「女」に通ずる3種を選んでもらったのがとても嬉しかったです。今年も、女にしか詠めない歌を詠むのが目標です。しつこくなりすぎないように雰囲気が出せたらいいなあ。
    ちょっと怖いくらい、って言ってもらえたのはとても嬉しかった!


    手首の歌はイマイさんもこゆりんも挙げてくれたのでよかったよ。なんか男の人の骨っぽいところ、好きなんだ。

    今年もよろしくね!
    ぜひまた一緒になにかしよう。
    女子会も楽しみにしてるね☆

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