2008年11月20日木曜日

Unknown

男が二股をかけることに別に疑問はなかったけれど、
いざ自分がされてみるとやっぱり少し驚いた。

その日、彼の部屋で雑誌を読んでいたら呼び鈴が鳴って、
彼が開けたドアの向こうには知らない女の人が立っていた。
一瞬「あ」という声と、変な空気が流れたけれど、
女の人は全部知ってたのか今知ったのか、帰っていってしまった。
それはあまりにあっさりと起こってしまって、
さっきまでの部屋の空気が嘘みたいで、なんだかおかしかった。
さっきの声は彼のか彼女のかどっちだったろう、とかどうでもいいことを考えながら、向こうを向いて少し離れて座る彼の背中を見ていた。
彼は黙っていたけれど、
何か言われそうだったので、先に口を開いた。
「ねえ、私のこと好き?」
彼の表情が変わった気がしたけれど、待っていた。
そして10秒くらいあと、ぽつりと彼は、
「好きだよ」
と言った。
「そう、じゃあいいや」
「え」
そう言って鞄を持って玄関に歩いていった。それを彼はどんな目で見ていただろう。
赤いミュールをはいてドアノブに手をかける。
その動作をおどろくほどスムーズに出来て、おどろくほどためらわずに私は言った。
「じゃあね」
それで終わりだった。
男が二股をかけることに別に疑問はなかったけれど、
少し驚いたくらいで怒る気も泣く気も起こらない私は、どっちにしろここにいてはいけない。
最後に彼のほうを見たら、情けない顔をしていた。
どうせあの子と晴れて付き合うことになるくせに。
もう少しうまくやんなよと言いたかったけど、言わないでおいてあげた。


よく出来た女とほめて 泣かないでいるのが偉いか知らないけれど

2 件のコメント:

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    本当にすごいと思います♪

    すっかりファンになってしまいました^^

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  2. SECRET: 0
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    ファンだとか!なんだか恥ずかしいですね
    ありがとうございます!
    まだまだだなあって書きつつ思っているのでこれからもがんばります。

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