私は、その人のことが好きだった。
そばにいすぎて感情の境界線がよくわからなかったけれど、きっと大好きだった。
今はお互い恋人がいるけれど、
そしてそれゆえに前よりは会う機会がぐっと減ったけど、
やっぱり会うと安心してしまう。
彼にだけ恋人がいるときの私はひどかった。
他大の彼女がいるのに、同じ大学同士の私と彼は大学の時間ほとんど一緒にいて、
授業も隣やまあまあ近い席で受け、
課題も一緒に出しに行った。
彼女がいることは重々わかっていたけれど、
入学当時から一緒にいるもんだから、なんていうか、止まらなかった。
私にとっていちばん居心地のよいところがつまりは、彼の隣だったのだ。
そして彼女のわからないところも私ならわかるだろう、わかりたいという傲慢さもあったのだ。
そんな彼ともちろん何もなかったわけではなく、しっかりと「何か」はあった。
手を繋ぎ、抱きしめられ、
その少し先のことも1度だけあった。あくまで「少し先」で「1度だけ」。
だけどその1度だけで私の心は折れた。
今までにくたらしく、ずうずうしく隣に居続けた私も、折れてしまった。
彼が嫌なわけではなく、
彼女がいる人とそういうことをすることの重さに、現実としてぶつかってしまったのだ。
それくらい私は弱かった。
その翌日はがんばって隣の席で授業を受けたけれども、
やっぱりなにかに無理があったせいか、疲れただけだった。
それから少し時間が経って、また私は彼と元通りになる。
そうやって、「何か」を越えては、ふたりして知らない振りして無理して笑って、いつのまにかまた力を抜いて隣にいるのだ。
彼にとってはずっと妹だっただろうけれど。
これから先、
きっと別々の人と結婚して、子供を生んで、
それでもたまに会うときには、この安心する感覚は忘れない気がする。
寒い寒い冬の夜、上着を掛けて肩を抱いてくれたことや、
繰り返ししては笑っていたくだらない話を忘れても、
あの安心感だけは。
あの星がなかったらその引力で 結婚できてたかな私たち
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短歌は好きな人に対して昔思っていたことで、
そしてかとちえの短歌教室「宇宙」に投稿した作品です。
短歌教室ではもうひとつの歌のほうが選ばれましたけど(笑)
今、そばにいる人のことがほんとに好きだけれど、
あの頃あの人のことが好きだったのもほんと。
長文て書くとつかれるにゃあ。
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おつかれさま!
いいねー。これ。
リアルで引き込まれる感じがする。
短歌もピリッと効いてて素敵。
シリーズ化して下さい(w
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この短歌、好きだったので、
ショートストーリー読めて嬉しかったです!
お疲れさま♪
ほんと。文章のリアルさが良い☆
なんだろう。
一言じゃ説明できない関係ってあるんもんねー。。
せつなくなりました。
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��さかいさん
ありがとうございます!さかいさんに褒められた(笑)
つらつらと文を書くのはもともと好きといえば好きなので、
シリーズ化、出来るように頑張ります…´∀`
>安藤さん
短歌、覚えててくれたのか!びっくり。
嬉しいです、ありがとうございます☆
ほんと、一言じゃ説明できないことばかりしてきました。。。
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>あくまで「少し先」で「1度だけ」。
いいです。
忘れ得ぬ一文になりました。
突然すみません。
ショートショート読み切っちゃいました。
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藻上さん
こんばんは。
こんな前の記事までありがとうございます。
ほんとうに、そのとおりだったのです。